夫婦の賃金率と結婚年齢に関する計量経済分析 : 日本の晩婚化は配偶者サーチと整合的か?
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概要
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結婚時期の経済分析には、結婚までの配偶者探索期間を明示的に取扱う配偶者サーチ・モデルが必要になる。その例が、労働市場におけるジョブ・サーチ・モデルを結婚市場に応用した Keeley (1977、1979)、Boulier and Rosenzweig (1984)、Matsushita (1989) らの配偶者サーチ・モデルの検証である。そこでは、サーチの限界費用とサーチの限界便益が等しくなるところまでサーチが行われるという条件から、両者が結婚年齢に与える影響を計量分析することができる。本論は、夫婦双方の賃金・労働時間などの経済変数と結婚年齢を同時に含む個票データを利用し、日本の晩婚化が配偶者サーチ・モデルの結論と整合性をもっか検定する。その結果、(1)配偶者サーチの便益に関しては、妻の結婚年齢が高まるほど夫の賃金率が低くなるという点で整合性を欠くこと、(2)配偶者サーチの費用に関しても、配偶者の選好の内生性を考慮すると、妻の賃金率が結婚年齢に影響を与えず整合的でないこと。(3)妻の賃金率よりもむしろ、妻の労働時間の長さが晩婚化をすすめていること、などがわかる。結局、配偶者サーチの重要な変数ついては、費用・便益ともに一部しか整合的な効果が認められず、両者だけで結婚年齢を説明するのは難しい。ただし、配偶者サーチに関与する変数のうち、ジョブ・サーチでの求人倍率に相当する未婚男女比や妻の労働時間が結婚年齢に有意であることなどは、配偶者サーチ・モデルと整合的な発見といえる。
- 2004-03-01