睡眠時無呼吸症候群 : 心血管疾患との関連性
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概要
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睡眠時無呼吸症候群Sleep apnea syndrome (SAS)は,心血管疾患の高い罹患率を有するため重大な社会問題として注目されている.近年,SASと心血管疾患は併存疾患という認識から,SAS自体が心血管疾患の発症および進展に直接的に関与する機序が明らかになり,心血管疾患に対する治療法の一つの選択肢としてSASを治療するという認識がもたれはじめた.SASには閉塞型(OSA)と中枢型(CSA)があり,OSA患者には高血圧症・冠動脈疾患・不整脈などの心血管疾患の合併率が高い.OSAを合併した高血圧患者は降圧剤治療に抵抗性を示すことが報告されており,特に肥満症例で治療抵抗性の高血圧の場合,OSAの存在を考慮するべきである.疫学的データなどからOSAが動脈硬化症と関連していることが示され,冠動脈疾患には高頻度にOSAが合併し,それが冠動脈疾患の独立した予測因子であると報告されている.SASと冠動脈疾患はともに耐糖能異常・脂質代謝異常・高血圧・内臓脂肪増加などが重積したメタボリックシンドロームとの関連が示唆されている.OSAの動脈硬化進展の詳細な機序は不明であるが,SASによる炎症惹起,内皮機能障害などが注目されている.一方,慢性心不全患者にはCSAの関与が報告されており,酸素療法・経鼻的持続陽圧呼吸療法などが慢性心不全の非薬物療法として確立していくことが期待される.標準的治療に反応が不良な心不全症例には,OSA,CSAの存在を疑うことが重要である.また,不整脈においても,徐脈性不整脈や心房細動とSASとの関連性が示唆され,CPAP治療が不整脈の予防・治療につながることが報告されている.以上のようにSASが心血管疾患の発症・進展に深く関与していることが示され,今後,心血管疾患に及ぼす影響をより詳細に解明するための基礎的研究が必要である.さらに,長期予後を検討するために心血管疾患を合併したSAS症例を対象とした大規模臨床試験の実施が必要である.
- 順天堂大学の論文
- 2005-09-30
著者
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