我が国排出権取引の展望
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概要
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本稿では、京都議定書 (Kyoto Protocol) 温室効果ガス排出権取引に焦点を当て、規制改革を軸に、日本への導入について展望する。当該テーマに注目する理由は以下にある。大気中のCO_2など温室効果ガスは、本来、地表温度を一定に保つことで生態系を保護する点で、地球規模の公共財である。とはいえ、今日、排出量増加による地球温暖化と生態系破壊が懸念される。それゆえ、公共政策上の課題として、国際社会全体で、費用効果的に温室効果ガスの排出抑制・削減を行い、その濃度を安定化させ、温暖化防止に取り組む必要がある。その手段の一つとして、排出権取引 (京都議定書の具体的措置たる京都メカニズムの一つであり、京都議定書付属書I国<先進国・市場経済移行国>内及び付属書I国間における温室効果ガス排出枠の取引) が挙げられる。京都議定書の発効 (2005年2月) を機に、EU (欧州連合) 排出権取引制度 (EUETS : European Union Emissions Trading Scheme) の開始 (2005年1月)、日本の環境省自主参加型国内排出量取引制度の開始 (2005年2月) など、排出権取引への各国・国際社会の取り組みに進展が見られる。そこで、上記の課題に対し、より適切な制度の構築と運用を目指して、排出権取引を展望する必要があると考えられるからである。以上の考察を通じて、本稿では、排出権取引の有効性、将来性及び意義に鑑み、持続可能な温暖化対策の1つとして、排出権取引制度の充実・普及を図る必要がある点を述べる。
- 2005-11-30