結膜弁被覆を併用した人工角膜手術とその組織学的考察
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概要
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近年, 難治性角結膜疾患に対して角膜移植に羊膜移植や輪部移植などが併用されているが, スチーブンス・ジョンソン症候群の重症例などでの治療成績は依然として不良である. 人工角膜とは, 混濁した角膜に代わり透明な人工物を移植し視力を回復する方法である. 我々は polymethylmethacrylate (PMMA) を光学部と鍔部に, polyurethane を支持部に使用した人工角膜を開発してきたが, 術後感染症が問題であった. 今回, 術式を結膜弁被覆併用に変更し, 家兎20羽20眼に施行して長期生着と組織学的変化を検討した. 結果は20眼中15眼 (75%) で良好な生着を認め, 最長観察期間は73週で, 平均観察期間は29.1週であった. 生着しなかった5眼では, 2眼に人工角膜の突出, 3眼に脱落を認めた. 術後合併症としては軽度の水晶体前方の混濁, 結膜嚢胞などを認めた. 組織学的検討では術後第2週では支持部内への多量の異物巨細胞の侵入を認めた. 術後第24週には支持部の polyurethane の一部が異物巨細胞に負食されて消失し, 角結膜由来の線維芽細胞と膠原線維に置換され, 67週ではほとんどの polyurethane が置換されていた. 我々の開発した人工角膜は結膜弁被覆を併用することにより, 支持部への安定した角結膜由来の線維芽細胞や膠原線維の侵入やさらに貧食による polyurethane との置換を認め, 安定した人工角膜の生着を実現していると考えられた.
- 近畿大学の論文
- 2004-12-25