尿路感染症惹起性大腸菌の腎培養細胞への細胞障害性
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概要
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小児尿路感染症から分離された122株の大腸菌の表現型を分析するとともに, 大腸菌から分離したα-ヘモリジン, O抗原, K抗原などの諸抗原の腎培養細胞に対する細胞増殖および障害性について検討した. 尿路感染症分離大腸菌のα-ヘモリジン, P線毛, K1抗原, o1, o6, o25抗原等の表現型と臨床病型との比較では, これらの抗原を有する大腸菌は上部尿路感染症からの分離菌に多く認められ, 中でもα-ヘモリジンおよびP線毛の陽性率は急性上部尿路感染症からの分離菌で著明であった. 大腸菌から分離したα-ヘモリジンをはじめとする諸抗原のラット腎メサンギウム細胞, イヌ遠位尿細管の増殖能に与える影響を検討した結果, α-ヘモリジンではメサンギウム細胞には影響しなかったが, 遠位尿細管細胞に対しては強い細胞増殖抑制性を示した. また, o6抗原は, o25抗原や標準株のo14抗原に比較して, メサンギウム細胞の細胞増殖刺激性が強く, 遠位尿路尿細管細胞に対しては, O抗原の種類に関係なく細胞増殖性を示した. K1抗原はメサンギウム細胞, 遠位尿細管細胞に対する細胞増殖性に影響を与えなかった. 以上の成績から, 上部尿路感染症惹起性大腸菌の特徴は, 接着因子であるP線毛や尿細管細胞に毒性を有するα-ヘモリジン, さらにメサンギウム細胞に対する刺激性を持つ特異O抗原などの種々の腎障害性因子を有するものであり, これらはごく限られたクローンの菌であると考えられた.
- 近畿大学の論文
- 2004-04-25
著者
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