中国国有大型工業企業における雇用管理実態の一考察 : 吉化集団公司の事例(1991年まで)を中心に
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概要
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本稿では吉化集団公司の事例を使用し,社会主義計画経済期(1949-1978年)および経済改革初期(1978-1991年)における従業員の募集,移動,構成および1956年の賃金構成と1985年の賃金構成との相違点を中心に国有大型工業企業の雇用管理の実態について考察した.国有大型工業企業においては,「固定工制度」が採用され,固定工としての従業員は全体の大半を占めていた.しかし,契約工,臨時工,集体工員といった非固定工が常に一定数存在しており,雇用の調節弁となっていた.固定工としての従業員は一旦採用されると,基本的には生涯雇用となり,採用されてから死亡するまで,手厚い保障を生涯継続的に受けることとなっていた.しかし,固定工とはいえ,全く移動がないわけではなく,国有企業間の移動が盛んであった.すなわち,社会主義下においても,労働力の移動は一定進んでいた.また,国有大型工業企業においては,厳格な幹部と工員の身分制度が存在し,幹部と工員との雇用条件が異なっていた.優秀な工員は幹部になる可能性があるが,その身分転換は政府の特別な許可および煩雑な手続きを必要としており,困難であった.賃金体系は1956年の高蓄積率を維持・確保する面で合理性をもっている賃金体系から,1984年以降の従業員にインセンティブを与える賃全体系に変化していた.しかし,従業員へのインセンティブの向上は労働生産性の向上とは等しいものではなかった.国有企業改革は初期において,徹底的なものではなく,さまざまな矛盾点を生じさせ,1990年代における企業制度そのものの改革の必然性を提示することになった.
- 立命館大学の論文
- 2005-03-31
著者
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