不完全観測下における望ましい不法行為責任ルール
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概要
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本稿では,事故発生後に当事者間の和解交渉が可能であるとき,加害者と被害者の事故抑止努力に関するインセンティブ問題を考える.2つの不法行為責任ルール(過失責任と寄与過失を伴う厳格責任)を比較し,どちらの責任ルールが望ましいかを分析する.被害者が加害者の事故抑止努力を完全に観測できる完全観測のケースでは,過失責任を用いることが望ましいことを示す.他方,被害者が加害者の事故抑止努力を完全には知ることができない不完全観測のケースでは,寄与過失を伴う厳格責任が望ましいことを示す.これは,たとえ被害者が加害者の行動をほとんど完全に観測できたとしても,過失責任は加害者の不法行為を完全には抑止できないことを意味する.また,現実では損害額よりも低い判決額が出されることがほとんどである.このことを,事故抑止努力インセンティブの観点から説明する.
- 立命館大学の論文
- 2005-03-31
著者
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