IFRIC公開草案D1「排出権」の特徴と諸論点の整理
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概要
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本稿は,地球温暖化の深刻化に伴い排出権取引という新たな取引が出現するに至った背景を確認し,それに伴い必要となる会計処理上の諸論点について,国際会計基準審議会(IASB)の国際財務報告解釈委員会(IFRIC)による取組みを取り上げることによって整理することを目的としている。「京都議定書」が発効し,日本を含む先進国(附属書I国)が第1約束期間(2008年一2012年)において,京都メカニズムのひとつである排出権取引を活用して二酸化炭素を主とする温室効果ガス削減目標を達成しようとする場合,排出権を取引するための市場が創設され,企業も参加することによって活発な取引が行われることが予想される。そこで,排出権取引の実施に際して排出権取引に係る会計上の指針を整備しておかなければ,会計実務上混乱を招くことは想像に難くない。この点に関して,IFRICは,排出権取引に係る会計処理案を提示した解釈指針公開草案D1「排出権」を2003年5月に公表している。「公開草案」は,IASBが保有する既存の「フレームワーク」および国際会計基準(IAS)によって,排出権取引をいかに会計処理するかという問いに応えるものである。しかし,「公開草案」による会計処理方法を採用すると,期間損益計算に歪みが生ずるという問題が存在する。
- 早稲田大学の論文
- 2004-12-15