通貨切り下げ政策による貿易収支の改善
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概要
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国際経済学においては,異時点間のあるいは通時的な予算制約条件に注目するときに,将来の経常収支黒字の和が,現在の対外債務と等しくなることが知られている。本稿ではタイ,インドネシア,マレーシア,フィリピン,韓国の5か国について,この予算制約条件を満たす為替政策の有効性を検討した。はじめに貿易収支,輸出入価格数量指数と対米ドル・対円名目為替レートのデータを利用して最小二乗法により,次に同時方程式モデルを2段階最小二乗法により推定することで各国のアメリカ向け主要輸出財の価格弾力性を推計し,各国通貨の減価と貿易収支の変化との関係を検討した。その結果,次のような関係が確認された-タイ・バーツの日本円に対する減価はタイの貿易収支の改善につながる,インドネシアと韓国では現地通貨の米ドルと円に対する減価は同国の貿易収支の改善につながる,フィリピン・ペソの円に対する減価はフィリピンの貿易収支の悪化につながる。またタイについては,バーツの米ドルに対する減価が貿易収支を悪化させる可能性が高いという結果が得られた。
- 2003-12-15