グローバルリテーラーの競争優位と海外市場への移転 : ウォルマートの日本進出のケース
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概要
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西友との提携による米ウォルマートの日本進出は,競争優位であるEDLPの現地移転を基本としている。具体的にどのようなリソース(知識,能力など)が移転されるかについては,競争優位(EDLP)に対する重要度と,移転難易度によって決定されており,移転される要素と現地適応される要素とが混在していた。そのため,ウォルマートの国際化(日本進出)戦略は,一見,バートレット=ゴシャールの「トランスナショナル」型を採用しているように見える。しかしながら,小売業態として,国際化を推進した競争優位に焦点をあてた場合,明らかに違う結果が見えてくる。すなわち,「本社のリソースを積極的に移転する戦略」である。このように,全体を見た場合と,競争優位に関わる部分を見た場合で,異なる結果が得られる理由は,小売業の産業特性である「生産と消費の不可分性」と「知識パッケージの高度な移転」に起因すると考える。すなわち,小売業は,進出先での操業において,小売業としての機能,要素をワンセットで保有される必要があるため,必ずしも,グローバルな効率性や子会社の役割にもとづく機能,要素の移転がなされるわけではないといえる。そのため,必然的に,優位性のない要素について,現地方式が採用され,移転と現地適応がミックスされることになる。反対に,製造業など,明らかに小売業と異なる特性(生産と消費が分離可能など)を有する産業では,グローバルでの競争優位の構築や戦略にもとついて,現地の機能・要素を移転できる。したがって,小売業というサービス産業の国際化を把握するにためには,全体の機能・要素ではなく,小売業としての競争優位(およびそれに関わる機能・要素)に限定し,それが,現地適応されるのか,それとも移転されるのかを検討することが重要だと考える。
- 2003-12-15