グループ内企業の取引構造とパフォーマンス
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年,日本においても連結重視の業績評価が当然のものとなりつつある。2000年3月期から適用された会計制度の変更はまさにそれを反映したものであり,これによって連結重視の流れはいっそう強くなったと考えられる。本稿では,グループ内の企業が行う取引に注目し,「グループ内企業間の取引は,各企業のパフォーマンスにどのような影響を与えるのか」というリサーチクエスチョンに基づいて,実証研究を行った。取引コスト経済学によると,企業は不確実性への対処・対応として,市場での取引や企業内部での開発だけでなく,企業グループのような中間組織を通じた取引という代替的取引構造を活用することが可能である。しかし,親密で安定した長期的な関係は同時に,柔軟性や自立性を低下させるという可能性も考えられる。さらに,「親会社の業績のための犠牲」や「子会社間での利益の平準化」といった日本独自のグループ経営が,個々の子会社・関連会社のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性もある。日本の大手家庭用電気機器メーカーの子会社・関連会社464社を対象として分析を行った結果,グループ内企業間の取引が各企業のパフォーマンスに与える影響は,取引のタイプ(仕入・販売)で異なるという結果が得られた。具体的には,グループ内での仕入は各企業の効率性を高め,収益性を安定させるが,対照的にグループ内への販売は,各企業の効率性を低下させるということが示された。
- 早稲田大学の論文
- 2003-12-15