中規模半導体企業のグローバル競争戦略
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概要
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本研究では、中規模半導体企業の競争戦略について2つのモデルを取り上げ、それらの競争優位の考察を試みるものである。半導体産業を歴史的に見ると、日本における大手総合電機メーカーや、米国における大規模な内製専門企業(Captive企業)のような寡占的大企業が優位とされてきたが、1990年代より中規模半導体企業でも収益性の高い企業がいくつか台頭していることが注目される。その企業特性を分析していくと、2つのモデルに集約できる。1つは、高機能ロジックLSI製品の設計開発と販売を専業とするファブレス企業と、アジアを中心とするファンドリーなど生産受託専業企業との間における「機能別分業型ビジネスモデル」であり、もう1つはアナログLSI製品において、設計と製造のノウハウを蓄積しながら、これらのノウハウのシナジー効果により差別化可能な高性能製品を作り出すという「アナログ専業の統合生産形態(IBM: Integrated Device Manufacturer)ビジネスモデル」である。これら2つのモデルを対象として、中規模性による収益性への寄与度を検証する。前者は、従来の資本集約型からの脱却と大規模企業のIDMモデルがもつ弱みからの革新を目指したモデルであり、ファブレスとファンドリーとの分業による補完効果で競争優位を高める。限られた経営資源の中で自社の中核能力に集中し、シンプルな経営を目指せることが、中規模ならではのメリットである。後者は、デジタル化できないアナログ領域のニッチマーケットに対して、参入障壁の高い差別化製品で競争優位を狙う。数値化できない固有のノウハウに改良を重ねて活用することや、製造オペレータの高いスキルレベルを継承していくことこそが、中規模特有のメリットである。高集積のロジックLSI製品のような最先端の製造設備ではなく、古い製造設備で差別化の機能特性が出せるという点において、中規模でも十分な競争力を備えることができる。2000年以降は、デジタル家電や携帯電話などの製品のライフサイクルが一段と短くなり、半導体デバイスについてもいかに早く開発し、量産化に先行できるかが企業の優勝劣敗を分けることになる。そのため、両者とも中規模性からくる限られた経営資源を自社の中核的能力に投下し、それ以外は企業間提携等により「俊敏な仮想的企業」を作り上げて、強みを活かすことが必要とされる。2つのモデルともそれぞれ俊敏な中規模半導体企業として成長していくための要件として共通性がみられる。つまり、競争優位を高める鍵が、特定顧客に照準を絞り、顧客ニーズの変化に対応できるような機動性を高めておくところにあると示唆されよう。
- 2005-09-30
著者
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