戦略的提携と組織能力との関係 : STLCD社のケース・スタディー
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概要
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組織にとっては他組織と差別化し世界で競争できるようにする組織能力が重要であると言われている。1990年代以降、自社にない組織能力を獲得する一種の手段として、戦略的提携が行われている。しかし、異業種間の戦略的提携は異質の環境で培った組織風土などのため、多くのリスクを学んでいる。このような異業種間の戦略的提携をいかにして成功に導くことができるだろうか。また、戦略的提携において組織能力はどのような役割を果たすのか。本研究では、このような問題意識に基づいて、ソニーと豊田自動織機の合弁企業のSTLCDを対象にケース・スタディーを行ない、その成功要因を明らかにした。本稿のケースであるSTLCDの合弁に参加したソニーと豊田自動織機は、そもそも組織の行動パターンのみならず、組織能力も全く異なる。一般的に異業種間の戦略的提携を成功させるためには、組織的・戦略的・文化的適合性を図るべきだと言われているが、本稿のケースではどのようにしてそれを達成したのだろうか。ケース分析の結果、3つの要因があったことが明らかになった。第一に、異質の組織能力の存在と相互の組織能力を尊重したことである。すなわち、互いに異なる分野における異質の組織能力が存在し、一方の組織能力を補う組織能力を他方が有していることが提携成立の成功に寄与し、提携後においては相互の組織能力を認める尊重の精神が重要に働いた。第二に、初期の困難を早期に解決できる組織構造づくりである。言い換えれば、組織図の部署配置にソニーと豊田自動織機の担当者を混合配置したのである。このような融合関係が比較的早い段階で親企業から派遣されたメンバー同士の異なる行動パターンを一致させる要素となった。第三に、意思決定の枠を構築して、組織内部のコミュニケーションを活性化したことである。具体的に、経営会議、組織交流、用語の交流などを行い、早期に相違の行動パターンを一致させるようにした。このような結果は、今後戦略的提携を考慮している組織は、事前に自社の組織能力を補える相手を探索し、相互の組織能力を尊重する努力を果たすべきであることを示唆する。
- 2005-09-30
著者
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