移転価格算定方法の問題点とその改善策の検討
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概要
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国際課税の問題が深刻化の様相を呈している。特にここ10年間国際租税摩擦はますます激化しているといえよう。多国籍企業の国際取引から生ずる所得に係る各国の課税権の攻め合いである。景気低迷の中、各国税務当局にとっては、現在全世界取引の大方を占めるといわれている多国籍企業の関連者間取引を、自国で発生した所得と認定して税収をあげたいところである。一方、企業にとっては、国内外で税務調査や課税が行われた場合、それに対応する労力や経済的二重課税という多大なコストを被ることになり、企業経営にとっても極めて重大な問題になる。企業の国際関連者間取引価格の高低が、各国に落ちる所得額に影響を与えるわけだが、この移転価格に関しては、日本をはじめとする殆どの国々及びOECDや国連において、独立企業間基準を用いて算定する、との統一認識がある。すなわち「第三者であったなら設定したであろう価格」で国際間の取引の値決めをする、というものである。各国は、同基準に基づいて移転価格の具体的算定方法を規定した移転価格税制を定め、課税を執行している。従って、各国で規定されている移転価格の算定方法や、OECDが公布しているガイドラインで説明している算定方法は基本的に同様なものになっている。しかしながら、現実には移転価格にまつわる紛争は企業と税務当局、そして国家税務当局間で絶えない。この紛争の種は関連者取引の独立企業間基準そのものの問題、及びその適用上の困難さに由来している。同問題は今日取引形態が電子商取引のように複雑化し、無形資産の重要性が増し、企業の統合が加速度的に進展する中、ますます深刻になってきている。本論文は、移転価格分析アプローチに改善すべき点がある、との問題意識に立ち、独立企業間移転価格算定方法の現状、歴史的変遷、問題点の考察を行い、今後の改善策を検討するものである。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2005-09-30