国際線定期航空会社の多国籍展開 : 委託と提携を基盤としたグローバル・オペレーション
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概要
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製造企業が海外市場に参入し、現地で経営活動を展開する方法のひとつとして、現地直接投資による内部化の形態が考えられる。多国籍企業の内部化のアプローチについては、多くの先行研究によってその企業行動の解明が試みられてきた。本研究で取り上げる定期国際線航空会社は、歴史の長さにおいても、オペレーションを行う地域と国の多さからも、海運企業や総合商社などのサービス産業と同様に、多くの製造企業に先行して国際経営を展開している。各航空会社では、世界に多くの乗り入れ地点を確保し、本国を中心に航空路線が集約された広範囲な放射線状のネットワークが構築されている。しかし航空会社の国際経営とは、自国と相手国の二地点間に路線権を獲得して、広く旅客と貨物を定期便で輸送することであり、今日貨物と旅客輸送を兼営する定期国際線航空会社には、そのグローバルなオペレーションにもかかわらず、海外において直接投資による多国籍企業の形態は見られない。航空会社の国際経営の特徴は、本社に意思決定の中枢を置き、海外の乗り入れ国に設置した支店、営業所を中心に、現地企業との委託と提携を基盤としながらオペレーションを行っていることである。内部化が進展しない要因として、法的な規制、提携の浸透、企業活動の独自性の欠如が考えられる。つまり、第一に二国間の航空協定で規定される経営活動と航空会社に対する投資の制約から、乗り入れ国を拠点とした事業の拡張性が期待できないこと。第二に業界特有の提携関係によるオペレーションや標準化された業務内容から、市場内取り引きによる外部委託に問題は生じにくいこと。第三に差別化の困難なサービスと航空業界の戦略的提携グループを基盤とするオペレーションの浸透によって、二国間の運航を超えた展開が困難な状況になっていることなどが挙げられる。立地優位性も内部化のインセンティブも限られている外国航空会社にとっては、現地市場を対象とする事業で優位性を持つことは困難である。実際に各航空会社の対象とする市場とは、本国が主体であり、海外市場は極めて限定的あるいは補完的と考えられ、製造企業の国際経営が求める拡張性とは大きく異なる。航空会社に見られる本社と本国の顧客を主体とするエスノセントリックな国際経営は、ますます強化される傾向にあり、現地の業務を海外支店と提携する外部企業に委託する形態は、現在の枠組みでのグローバル・オペレーションに適合しているといえる。一方で将来的なパラダイム・シフトにおいては、多くの課題をもつ。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2005-09-30
著者
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