「○型vs.□型」モデルの再考 : 日系メーカーアジア子会社における取り組みから
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概要
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近年、日系メーカー各社のアジア子会社への生産移転が進展しつつある中で、アジア子会社にとって「現地人材の育成を一層進めること」が喫緊の課題となっているが、この点については、従来、「着実な成果をあげてきた」とする指摘と「(特に経営幹部層について)現地人材の登用が遅れている」とする指摘が同時になされてきた。これら「2つの観察事実」を説明するにあたって、石田(1982)は、「日本企業の"職務のあり方"」と「現地従業員の"職務に対する考え方"」との間の"ミスマッチ(非補完性)"に注目し、「○型vs.□型」という分析モデルを用いてきわめて説得的な議論をおこなってきた。本稿では、筆者のアジア子会社に対する聞き取り調査の結果に基づき、石田のモデルにいくつかの変更を加えて「新たな"○型vs.□型"モデル」を提示するとともに、(1)日本企業の"従来の強み"、(2)現地環境との非補完性ゆえの"非効率"、(3)"現地適応"と"従来の強み"実現に向けた人材育成上の取り組み、の3点に関して考察を深めることを試みた。すなわち、(1)日本企業の"従来の強み"に関しては、石田が論じた"職務の柔軟性"の具体的なあり方を、(a)各メンバーの周辺領域への対応可能性、(b)現場同士の柔軟な調整・連携、(c)他のメンバーとの"○のあり方"の高め合い、という「効率性の3つの側面」から整理した。また、(2)"非補完性ゆえの非効率"に関しては、石田が論じた"○型と□型のミスマッチ"の具体的なあり方を、「現地従業員の"□型意識"ゆえに、"効率性の3つの側面"のいずれもが実現困難となる」状況として理解した。さらに、(3)「"現地適応"と"従来の強み"の実現に向けた取り組み」に関しては、これらを「一次的対応としての"□型基本体制"」と「長期的対応としての"□型&○型"の融合」からなるダイナミックなプロセスとしてとらえ、2つの具体的な取り組みを紹介しながらその例証を試みた。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2005-09-30
著者
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