「産む」選択を死守するために : 出生前診断をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,出生前診断によって胎児の障害が発見された場合に生じる親の「産む」,「産まない」という選択をめぐる諸問題を検討し,「産む」自由を確保するための視点を提示することを目的とする。出生前診断によって胎児の障害が発見された場合,「子供が将来不幸になる」ことを理由に,中絶が選択されることが多い。しかし,「障害を不幸であるか否か」を判断する主体は,当の子供以外にはありえない。子供から判断の機会を奪うという点から見ても,これを「親の自己決定」によって正当化することはできない。また,「子供が不幸になるから」という,一見他者を思いやっているかのような理由は,「産まないこと=よいこと」,「産むこと=悪いこと」という価値付けにつながり,「産む」という選択を困難なものにしかねない。「産む」という選択肢の確保のためには,「産まない側」の唱える「子供が不幸になる」という主張を否定する必要がある。むしろ,「障害者と関わる自分が不幸になるから産みたくない」という利己主義が主張されるべきであるように思われる。
- 佐賀大学の論文