觸媒の作用面に關する説明に就て
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概要
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輓近液體燃料の需要激増の爲め種々の原料より人工的且工業的に適當の液體燃料を製造し以て天然産油を補はんとする研究が各國燃料工業界の一部に重要なる意味を以て行はれつゝあることは今更多言を要せざる所であつてメタノール又はシントールの合成法ベルギン法等を始めとしてピッチ重油の還元的分解につきての諸發明又は研究が即之れである而して燃料工業を通覽するに常に一貫せる重要なる事實があるが如く思はる例へば石炭の乾餾に於ては一方に炭素分子を遊離せしめ骸炭とし他方には石炭成分の組合せを新にし元の石炭より水素に富める瓦斯又は油類を生成する等水素の去就に著しき變化がある又前述せる研究に於ては水素の活動が更に著しきものにして之を換言すれば燃料工業を或種の見地よりして一種の還元工業とも見做し得るかと思はるゝ所がある勿論燃料の價値を發揮する手段は今の所主として酸化である故其の原料である燃料を製造する工業が一種の還元工業であると云ふことに不可思議はない此の還元と云ふことゝ水素のキャリヤー即觸媒作用をなす物質との間には極めて密接に重要なる關係あり普通では出來ない還元若しくは合成が觸媒い存在によつて容易に其の目的を達成し得ると云ふことは實に吾人の認むる所である從つて代用液體燃料の合成に於て此の觸媒に關する知識を缺けることは其發明進歩を期する上に於て甚だしき遺憾を伴ふものなるを否定し得ぬ此の意味に於て次に掲ぐる久保田氏の觸媒に關する一文は燃料研究者とも深き關係を有するものと云ふことが出來る
- 一般社団法人日本エネルギー学会の論文