天保期における農家家計 : 河内国河内郡四条村中塚家の場合
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概要
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今まで,近世における農家家計のあり方を理解するために,個別家計の分析をいくつか試みて来た。それらにおいて考察したように,各々の家計がおかれた条件によって,その家計内容の動きにはちがいがあった。けれども同時代の家計として共通した動きも少なくない。これらの個別家計の分析を重ねることにより,個別的な動向と,一般的な傾向とを次第に明らかにすることができ,当時の家計を支配した主要な条件は何かということも理解することができるのではないかと考えている。そこでこの小論においても,同じような方法,すなわち「万覚帳」「売物帳」「金銀取引帳」「小作諸勘定帳」などの私的経営簿類を史料として,河内国河内郡四条村(現,大阪府東大阪市四条町)中塚家の天保期における家計の実態を明らかにして,そのあり方を検討したいと思う。とり扱う時期は,天保4年(1833)から天保15年(1844)の約10年間ではあるが,家計について知りうる史料が,この時期に集中的に揃っているため,かなり詳しく検討できるのではないかと思う。すなわち上記の経営簿類だけではなく,祝儀帳などもよく残されているので,経常支出のみでなく,臨時支出についても考察することができるだろうと考えた。また,この地域は大阪という大商業都市をひかえた,いわゆる河内綿作地帯に属し,早くより木綿,菜種などの商品作物の栽培とともに木綿の加工業である綿織も広く行なわれており,すでに天保期には当地域の家庭生活の中に貨幣経済が深く入って来ていたものと思われる。中塚家が収納していた小作米も,大半は現金であることからみても,貨幣経済はすでに上層農民だけのものではなく,広範な一般農民の家庭生活の中で営なまれていたと考えてもよいだろう。このように貨幣収入をもち,日常の消費財も購入しやすい条件におかれていた場合,当時の農家は,家庭生活のどのような側面に重点をおいていたのであろうか。家計支出はどのような要因によって動かされていたのだろうか。具体的な家計内容の実態を検討しながら,これらの点を考えて行くことにしたい。The domestic expenses of a landed farmer's household in Kawachi in the Tempo Period are discussed from a viewpoint of domestic economy. The domestic expenses for clothing, housing and social life have been considered to be more important than that for food, light and heat.
著者
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