長崎県対馬の対州層群産貝類化石
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概要
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菅野三郎(1955)は対州鉱山坑内より産出した貝化石にもとづき, 対州層群の地質時代を漸新世後期または中新世初期と推定した。高橋清(1958)は, 若田産植物化石より, その時代を漸新世とし, 北九州の大辻階に対比されるべきものと考えている。本論文においては, 下記の諸産地の貝化石を研究し, 対州層群の地質時代を推論した。(1)厳原町対州鉱山新富坑(対州層群下部, 佐須層), (2)上県町立石(対州層群上部層), (3)上県町井口(上部層), (4)美津島町鶏知-大船越間の新坂(対州層群中部, 鶏知層), (5)美津島町久須ケ浜(鶏知層), (6)美津島町竹敷(鶏知層), (7)美津島町小船越(対州層群上部, 芦ケ浦層), (8)美津島町賀谷(芦ケ浦層上部), (9)峰村佐賀(対州層群中部層), (10)豊玉村佐志賀(対州層群中部層), (11)美津島町一ノ倉峠の西500m(鶏知層), (12)峰村櫛(対州層群中部層)。いずれも保存は良好とはいえず, 時代を論ずるのに十分ではないが, 次のように結論できる。対州層群の下部は, Anadara, Mizuhopecten, Dosiniaなど, むしろ日本列島の新第三系に普通な属によって特徴づけられる。これらのうち最も興味ある種は, Mizuhopecten cf. kimurai murayamaiで, 通常, 他のホタテガイ類や腕足類などと共出することが多い。しかし対州層群では, そのような共生関係が見られず, たとえ本種を産出しても対州層群は日本の新第三系よりは時代的に古いように思われる。これに対して, 中部および上部は, Bathyamussium amakusaensis, Portlandia (Portlandella) tsushimaensis, MASUDA, n. sp. Yoldia cf. laudabilisで特徴づけられ, 特に第1と第3の種の産出は, 古第三系であることを示唆する。対州層群の地質時代の決定には, さらに詳細な層位学的研究と保存良好な化石の発見が必要であろう。最後に2新種Sarepta fujiyamaeとPortlandia (Portlandella) tsushimaensisを記載し, Mizuhopecten cf. kimurai murayamaiについて附言した。
- 1970-10-20