施灸による抗炎症作用の基礎的研究
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概要
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鍼灸療法における灸施術は、色々な疾患、症状、症候の改善に有効であるといわれている。古来より現在にいたるまで、灸施術は鍼施術と同様に連綿として用いられてきた。最近、鍼療法は欧米でかなり認識されてきている。しかし、灸療法はそれほどではなかったが、段々と見直されつつある。灸療法の臨床効果の基礎的裏付けを検討することは重要である。施鍼により、炎症時に浮腫のような症状の改善することが認められている。このことは、臨床的にも報告されている。最近、免疫学的アプローチから様々な免疫的生理作用が施灸にあることが認められている。このようなことから、本論文では炎症の第一相である血管透過性亢進による浮腫の施灸による抑制作用について検討された。その結果、マウス足蹠セロトニン投与血管透過性亢進による浮腫が曲泉相当部の施灸で抑制されることが認められた。その施灸によって血清中に新たなタンパク質の出現が認められた。しかし、施灸部筋肉のタンパク質には、新たなタンパク質の出現を認めなかった。そのことは、施灸の浮腫に対する抑制作用が血清中における新たに出現したタンパク質によるものであることを示唆した。その血清タンパク分画は、セロトニン投与によって急性炎症像を示していたが、施灸によって炎症が抑制されている傾向であった。ここでは急性炎症時に限られているが、このようなことからも施灸には抗炎症作用のあることが示唆された。血清superoxide dismutase (SOD)はセロトニン投与によって上昇した。炎症と活性酸素の一種であるsuperoxideとが関係することにより、superoxideのscavenger酵素であるSOD活性上昇が誘導されたと思われる。そして、施灸によりさらに血清SOD活性が上昇したことは、施灸がSOD活性上昇をさらに強く誘導することで抗炎症作用を有していることを示唆するものである。セロトニン投与足蹠浮腫部の形態学的所見においては、施灸による浮腫の著明な変化は認められなかった。しかし、セロトニン投与足蹠浮腫部へ肥満細胞の浸潤とその脱穎粒が施灸によって抑制される傾向が認められた。これは、施灸の抗炎症作用の一つとして、肥満細胞の浸潤と脱類粒に対し抑制作用があることを示唆するものである。以上のような結果は、施灸の抗炎症作用の生理学的、形態学的証明の一つになる。このことは灸臨床効果の裏付けになるともいえ、これにより灸治療の有効性を再確認することができた。
- 2004-03-31