心室圧容積曲線に基づくIschemic preconditioningの心収縮機能保護効果
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概要
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Ischemic preconditioning(IPC)とは心筋細胞が壊死を引き起こさない程度の短時間の虚血と再灌流を数回繰り返すことにより,その虚血耐性が増強する現象をいう。本研究はビーグル成犬を用いて心筋虚血モデルを作製し左室圧容積曲線の解析からIPCの効果を心機能的に検討した。方法は冠動脈左前下行枝に設置したoccluderの操作を行い,5分間の虚血・再灌流を5回繰り返し連続的に心室圧容積曲線を作成し,収縮期最大エラスタンスEmax,心室-動脈整合条件Ea/Emax(Ea:実効動脈エラスタンス)および機械的仕事効率EW/PVA(EW:外的仕事量,PVA:左室収縮期圧容積面積)を測定した。またH-FABP(心臓型脂肪酸結合蛋白)を経時的に測定した。結果はEmaxは虚血1回目だけが有意に(P<0.05)低値を示したが,3回目以降の再灌流により上昇した。次にEa/Emaxの測定では虚血1回目だけが有意に(P<0.05)高値を示し高度心機能低下が示唆された。EW/PVAは虚血1回目で有意に(P<0.01)低値を示し,仕事効率の低下を認めた。H-FABPは有意な変動は認めなかった。本研究の結果から,最初の虚血操作で心収縮能は低下したが,その後の虚血負荷では心収縮能は十分に保たれ,心臓機械的仕事効率は改善していくことがわかった。5分1回の虚血負荷でその後の心収縮能が保持されたことは今後のoff-pump冠動脈バイパス術で十分応用できるものと考えられた。
- 金沢医科大学の論文
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