内耳遺伝子導入による神経栄養因子(BDNF)のモルモットラセン神経節細胞に対する保護効果
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概要
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蝸牛有毛細胞の変性に起因する内耳性難聴に対して,二次的なラセン神経節の退行変性を防御することは難聴の治療において大変重要となる。本研究では,神経栄養因子の一つであるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)のラセン神経節細胞に対する保護作用と,ウイルスベクターを用いた遺伝子導入の方法が可能か否かについて検討した。実験は有色モルモットを用い,耳毒性薬剤により内耳性難聴モデルを作成した。薬剤投与日から7日後に,BDNFの遺伝子情報が組み込まれたアデノウイルスベクター(Ad.BDNF)を,正円窓より蝸牛外リンパ腔に注入した。アデノウイルスが蝸牛鼓室階のMesothelial細胞に感染し,BDNFを産生していることが確認された。28日後,蝸牛軸を取り出し,ラセン神経節細胞の形態的変化と生存細胞数を観察した。その結果,Ad.BDNF注入群と}ecombinant human BDNF(rBDNF)を注入した群との間には形態上の変化は観察されず,また生存数においても有意差はみられなかった。しかし,他の遺伝子情報を一部削除されたエンプティ-アデノウイルス注入群や人工外リンパ液を注入した群では,細胞の変性,消失がみられ,数においてもBDNF注入群との間で有意差がみられた。以上の結果から,BDNFは二次的な変性からラセン神経節細胞を保護することが明らかとなった。また,アデノウイルスベクターによる遺伝子導入は,Mesothelial細胞内での長期間のBDNF産生が期待でき,将来の臨床応用において有用な方法であると考えられた。
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