HMGI-C遺伝子導入によるヒト膠芽腫培養細胞の増殖抑制に関する研究
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概要
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中枢神経に原発する腫瘍のなかで,悪性神経膠腫の治療成績は未だ不良である。特に膠芽腫は,同じく神経膠細胞が起源とされる分化型神経膠腫に比べ極めて予後不良であり,細胞起源を特定できる形態学的特徴は失われ,著しい多形性を呈し,細胞の分化に破綻をきたした脱分化状態であると考えられている。本研究は,細胞の分化過程に重要な役割を果たしていると考えられているarchitectural transcription factorの一つであるHigh-mobility group I chromosomal(HMGI-C)蛋白を,遺伝子導入により膠芽腫細胞に強制発現させ,細胞分化を誘導するとともにその増殖能の変化を検討することを目的とした。HMGI-C蛋白強制発現用プラスミドベクターを構築し,T98G膠芽腫培養細胞へHMGI-C遺伝子導入を行い,その細胞株化に成功した。遺伝子導入細胞におけるEMGI-CmRNAおよびHMGI-C蛋白発現は,RT-PCR法,免疫染色,Western blottingにて各々確認した。さらに,増殖能の変化の検討では,HMGI-C遺伝子を導入した膠芽腫培養細胞では増殖速度の有意な低下と細胞倍加時間(cell doubling time)の延長を認め,明らかな増殖抑制が観察された。また,フローサイトメトリーでの検討により,HMGI-C遺伝子導入細胞ではSおよびG2/M期の細胞数が減少し,G1期の増加を認め細胞周期の延長が確認された。これらの結果は,HMGI-C蛋白が,神経膠腫における細胞分化に関与するとともに,膠芽腫に対する増殖抑制作用を有していることを強く示唆するものである。
著者
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