リドカインを用いた静脈内局所麻酔による血液線溶能の変化
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概要
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局所麻酔法の一つに,駆血帯によって循環血流を止めた四肢静脈にリドカインを投与するBierブロック法がある.この方法は手技的にも簡便であり,非常に優れた麻酔法として汎用されている.一方,周術期および手術後に生じる血栓症は患者を死に至らしめる重大な合併症である.血栓症の発症に関与する血液線溶系因子および血管内皮細胞機能に対するリドカインの影響について検討をおこなった.リドカインはu-PAの酵素活性を競合阻害し,u-PAによる血漿塊の溶解を濃度依存性に抑制した.また血漿にリドカインを加えることによって血漿中のu-PA活性は低下した.しかし,リドカインはt-PAの酵素活性には影響を及ぼさなかった.樹立化血管内皮細胞(TKM-33)を用いて血管内皮細胞に対するリドカインの作用について検討した.正常酸素下でTKM-33細胞を培養したところ,リドカインは細胞培養液中のu-PA活性を有意に減少させ,細胞表面分画中のPA/PAI-1複合体を濃度依存活性に増加させた.低酸素下でTKM-33細胞を培養したところリドカインは,細胞培養液中のu-PA活性,t-PA活性およびPA/PAI-1複合体を有意に減少させた.また,t-PAのmRNA発現量はリドカインによって低下傾向を示した.以上より,リドカインは血液中のu-PA活性を抑制するとともに低酸素下ではt-PAの合成を抑制して血液中の線溶活性を低下させることが明らかになった.
- 近畿大学の論文
- 2003-12-25
著者
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