齒槽窩内ニ殘留セル所謂 Wurzelstumpf 並ニ Dentinsplitter ノ運命ニ關スル實驗的研究
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概要
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吾人ガ臨床上、抜齒時ニ偶然ニモ齒牙ガ破折シ其ノ破折殘根ガ齒槽窩内ニ殘留セル場合或ハ又齲蝕ニ由り齒冠部ハ全ク崩壞シ極ク僅ノ齒根部ノミ殘レル場合ヲ日常屡々經驗スルモノデアル。其等ノ所謂Stumpfナルモノハ齒槽窩内ニ於テ如何ナル變化ヲ惹起シ、又如何ナル運命ヲ辿ルモノデアラウカ、吾々ハ犬ヲ實驗材料トシ各期間ニ亘リテ其ノ經過ヲ觀察セリ。破折殘根ハ其ノ感染、非感染ニヨリテ其ノ治癒經過並ニ其ノ運命ヲ異ニシ、非感染ノ際ニ於テハ往々骨増生並ニ白堊質形成ニヨリテ殘根ハ完全ニ骨内ニ埋沒セラレSzabo氏ノ所謂Plantatノ状態ニ於ケル治癒ヲ示セルモ感染セル場合ニ於テハ破骨巨大細胞ノ出現ニ由リテ吸收消失ヲナスカ或ハ齒槽窩底部ニ於ケル骨増生ニヨリテ齒槽窩外ニ排出セラレ遂ニ外部ニ排除セラル、運命ヲ辿ルモノデアル。然レ共其ノ經過中ニ於テ齒槽縁ノ骨増生ニ由リ一部治癒ノ傾向ヲ示スモ化膿病竃ハ依然トシテ存在シ殘根破折面ニ於ケル齒槽縁ノ骨癒合行ハレズ長ク慢性ノ化膿性炎症ヲ伴へル場合アリ。尚創窩内ニ於ケル破折齒、小片竝ニ異物ノ存在ハ他日其ノ周圍ニ著シキ炎症ヲ惹起シ一創窩内ノ多數ノSplitterハ各個ニヨリテ其ノ治癒時期ヲ異ニシ從テ創傷全體ニ於ケル治癒ハ遲延セラル、モノデアル。而シテ齒牙破折小片竝ニ異物ハ遂ニ吸收消失又ハ外部ニ排除セラル、カ或ハ往々ニシテ此ノSplitterヲ中心トシ、其ノ周圍ノ結締織ニ石灰化ヲ惹起シテ完全ニ此レヲ圍繞シ所謂比較的治癒ノ状態ヲ示スモノアリ。而シテ吾人ハ如何ニ拔齒創ノ治癒ガ殘根或ハ齒牙破折小片(Dentinsplitter)ノ存在ニ由テ著シク其ノ治癒經過ニ阻害遲延セラレルカト云フ事ヲ知ルモノデアル。從テGottlieb氏、Euler氏、Szabo氏ニ由リテ強調セラレタル「如何ナル場合ニモ拔齒ハ完全デナケレバナラナイ、決シテ小ナル齒牙破片ト云ヘドモ齒槽窩内ニ放置スベカラズ」ト云フ結論ニ到達セリ。而シテ尚非感染性ノ破折殘根ニ於テハ往々ニシテ良好ナル經過ヲ辿リテ骨嚢内ニ完全ニ包埋セラレ治癒ノ經過ヲ示スモノアリ。
- 九州歯科学会の論文
- 1935-12-15
著者
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