公共サービス論議が前提する公共概念への批判的考察
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概要
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政策学にとって一般市民との広範な議論は不可欠の要素であるが、公共サービス再編をめぐるそれは、納税者の合理的選択というNPMの特殊な前提に偏りすぎる。あるサービスは税負担してまで必要なのかという広範な議論をどうにかして活性化させねばならないというのに、NPMは運営改善のコスト削減でお茶を濁しているだけではないのか。 しかも、一般の人々の関心を公共サービス改革と結び付けるには、「身近」であればよい、というわけにはいかない。地方分権が進むなか、ハイ・ポリティクスは国に、面倒な生活トラブル関連は自治体に、といった「役割分担」論では、ある事業の必要性を一般市民の本音は政体や基本方針と結びつかないことになる。我々は「身近」で狭小な世界に民主的に閉じ込められることになる。 本稿はこのような問題意識から、公共サービスの「公共」概念を、公共財ではなく「公共圏」に基づかせようとする。ただし本稿はハーバーマス論には批判的で、むしろポピュリズムという怪しい概念との接続を図ろうとする。こうした観点から、エージェンシー化をめぐる議論がいかに一般の人々に関わり難いものであるかを具体的に示し、学界論議のイレレバンスをこそ批判するのである。自治体とNPO等の協調主義的な役割分担論、「ユーザー・デモクラシー」論議などを批判的に取り上げるのは、その延長であり例示である。
- 同志社大学の論文
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