エリザベス朝に於ける修辞法と登場人物の創作
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概要
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本論文ではElizabeth朝時代の劇作中に於けるrhetoricとcharacterizationとの関係をまず第一に総合的観点から,そして次に作品中の具体例(今回は特にShakespeareやKydの作品を中心に)を出し論評を試みた。characterizationは劇の構造上,plot同様不可欠な要素であっても,rhetoricは言語表現の一部であり,たとえそれが無くても劇の構造上問題が生じないことは確かである。rhetoricは伝統的には高貴な人物のみに用いるのが常でrhetoricの持つ華美でもったいぶった表現はまさにその伝統的特質を示すところがあるが,ShakespeareやKydのような偉大な劇作家の手にかかってはその特質もやがて薄らいでいくことになるのである。例えば高貴な主人公HamletやMacbethばかりでなく道化者や門番といった卑賤な人物までが,rhetoricを用いた詩的な表現をするような場面が多く出てくるようになるのである。著者は本文の研究より,rhetoricが熟練した手のものによって用いられた時は,後に何人かの批評家たちによってmere toys, husks, dry formulaeあるいはsteril patterns with no imaginative functionと酷評されたこととは程遠く,登場人物の心理や事件の様子をこの上なく素晴らしく表現する道具になっていることがわかった。またある特定の場面で一つのrhetoricのfigureが複数の人数で巧妙に,そして軽快に展開されることによって,その場の情景はもちろんのことながら,一人一人の登場人物が活き活きとした姿で観客席に伝わってくる事実を考えても,rhetoricがいかにcharacterizationに好影響を与えているかが判明した。
- 東京聖栄大学の論文
- 1988-12-20