ヒト血清由来インスリン作用増強ペプチド(H-ISP)に対する単クローン抗体の作製と血清H-ISP測定法に関する研究
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概要
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新垣,織邊,上野,竹田ら(1984)は,ヒト血漿中からインスリン作用増強因子を分離し,Human insulin-stimulating peptide (H-ISP) と命名し,その生化学的特性を明らかにしてきた。今回,筆者はH-ISPに対する単クローン抗体を作製し,血中H-ISP濃度の測定法を開発することを目的とした。単クローン抗体の作製は以下の方法によった。精製H-ISPを6〜8週齢の雄性BALB/Cマウスの腹腔内に3回投与した後,その脾細胞(1.0×10^8個のリンパ球)とNS-1細胞株のマウス骨髄腫細胞(1.0x10^7個)をポリエチレングリコール4000の存在下で融合し,HAT培地でハイプリドーマのみを選択的に増殖させた。増殖後ELISA法で抗H-ISP抗体を産生するハイプリドーマを選択し,限界希釈法でクローニングし,5種の単一クローン性ハイプリドーマを得た。そのうち抗体価の高い"a3"および"b4"につき,その産生株を大量培養し,培クラスを同定した。サブクラスはa3・b4ともにIgG2aに属した。a3抗体は,H-ISPに対する良好な標準曲線が得られたので,ELISA法によりH-ISP測定法を確立した。さらに本法によって,糖負荷前後の血中H-ISPの変動をみたが,正常型・境界型・糖尿病型のいずれの群においても差を認めなかった。H-ISP の糖代謝調節因子としてのin vivoにおける意義は少ないと考えられた。