爪ケラチンのglycation測定とその臨床的意義に関する研究
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概要
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Glycationは蛋白と還元糖との間で非酵素的,非特異的に生じる反応であり,hemoglobin A_1(HbA_1)は既往の血糖コントロールの指標として注目されてきた。著者は,蛋白のlysine残基のεアミノ基にglucoseの結合したfructose-lysineを酸性加水分解して生成されるfurosineを,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し,爪蛋白(ケラチン)のglycation(glycated nail protein; GNP)の指標として用いた。糖尿病患者のGNP値は10.5±4.6%(mean±S.D.) と健常者のGNP値4.5±1.3%に比較して有意に高値を示した。さらに爪を採取した時点のHbA_1とGNPとの間には,有意の正相関が認められた(r=0.55, n=83, p<0.001)。GNPと空腹時血糖(FBG)との間では,爪採取時点よりも3〜5ヶ月前のFBGとの間に良好な相関が認められ,とくに4ヶ月前のFBGとの間に最も良好な相関がみられた(r=0.66, n=43, p<0.001)。一方,GNPと末梢神経伝導速度との間には,有意の負の相関が認められた。また,糖尿病性網膜症を有する症例のGNP値は,網膜症のみられない症例に比べて有意に高値を示した。これらの結果よりGNPは,HbA_1に比較してより長期の血糖コントロール状態を示す指標になるとともに,組織蛋白のglycation及び糖尿病性合併症進展の指標としても有用であると考えられた。
著者
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