高金利政策と経済成長 : ワインバーゲン・モデルの再検討(田村茂教授退任記念号)
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概要
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途上国における金利政策のありかたを考えるマッキノン=ショー仮説をめぐる論争を整理する。具体的には,マッキノン仮説に対する批判の中でもっとも大きな影響を残したワインバーゲンのモデルを検討する。まずモデルが一般化されたIS-LMモデルとして理解できることをあきらかにする。通常のIS-LMモデルとはちがい,ワインバーゲンのモデルでは貨幣供給が内生化されている。金融市場には銀行の預金市場の他に,公的には許されていないものの,実際の途上国では厳として存在する未組織金融市場が想定される。預金市場の金利は政策当局によって外生的に決定される。預金金利の変更に対して所得がどのような方向に反応するかがワインバーゲンの主たる分析目的である。本稿における整理を通じて,ワインバーゲンのモデルは確定的な比較静学の結論を導いていないというばかりでなく,IS-LMモデルを用いるという視点自体がマッキノン等が本来考えていた問題との関係では不満足なものであるということがあきらかにされる。金融のありかたが貯蓄行動にどのような影響をあたえるかということが論争の発端であったにもかかわらずIS-LMモデルでは貯蓄主体と資金供給主体との関係が曖昧なものになってしまっていることがもっとも大きな問題であることを指摘し,今後の研究の方向を示唆するのがこの論文の最終目的である。
- 慶應義塾大学の論文
- 1994-04-25