戦略志向の研究開発マネジメント : わが国エレクトロニクス産業における研究開発活動の実証分析(清水龍瑩教授退任記念号)

概要

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現代企業がおかれている環境は,その変化の方向,速度において連続的な思考では予測し難いものになってきている。このような環境下では,従来からいわれているストックとしての経営資源だけで企業が持続的な競争優位を確立していくことは困難な状況となってきており,むしろ必要とされるのは,それを企業の競争力に昇華させるための経営資源の戦略的な展開の仕方にある。製造業の場合それは,研究開発活動の戦略的展開ということである。本論文ではトップマネジメント,研究開発本部,事業部,全社横断的研究開発プロジェクトから構成される研究開発の戦略分析モデルが提示され,アンケート調査とヒアリング調査に基づき実証分析がなされる。そこでは研究開発の成果を技術的成果と経営的成果に分けてとらえる。研究開発フェーズに沿って研究開発に有効な経営要因についてみると,既存分野製品の改善には,事業部の現場レベルの努力が大きく関わっており,採用された多様な人材が,製品の改善に向かってお互いに活発な議論をしていく文化を持つことが重要といえる。また新分野製品の開発では,フェーズ順に,トップマネジメントが研究テーマの設定を重点事業の関連分野に特化していくこと,この枠の中で研究者が活発で自由な論議ができるような文化を作り上げていくこと,戦略との整合性を計るために縦の情報共有を進めること,技術ポートフォリオや研究所間の横の情報共有によりきちんとテーマを評価して絞り込んでいくことが重要といえる。また競争上,スピーディーな開発が必要な場合にはトップの強力なリーダーシップの下で全社横断的な研究開発プロジェクトを進めていかなければならない。事業部へのスムーズな技術移管は主として人材交流を通じて行われていくが,研究成果について個々の研究者を明確に評価し,給与面においても能力給的な色彩を強めていくことが彼らの活性化につながってくるといえる。
慶應義塾大学の論文
1994-06-25

戦略志向の研究開発マネジメント : わが国エレクトロニクス産業における研究開発活動の実証分析(清水龍瑩教授退任記念号)

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