生命保険経営の新考察(庭田範秋教授退任記念号)
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概要
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保険経営学において,保険企業の立場からの実務的研究が優勢であるが,保険事業の公共性・社会性を考えるとき,保険企業の立場からだけでなく,社会的な観点を加えた,総合的な保険経営理論を論究することは意義がある。企業は,種々の経営目的を持っているが,企業を永続的に発展させることが究極の目的であり,収益性と永続性は最大の課題である。このことは保険企業にも妥当するが,保険の性格から,保険企業の永続性は,加入者サイドからも要請される。生命保険企業活動には,さまざな制約要因が考えられ,企業利益と加入者利益の調和,企業利益と社会的貢献の調和などが重視される。これらの実行促進のためには,経済学者や保険学者らの理論をふまえた客観的立場からの提言も大切である。生命保険経営の安全性のために,過度に収益性を追求してはならず,安全性を図りつつ収益を上げるという安定性が求められ,市場環境への適切な対応を図るという経営努力が要請される。生命保険事業は,公的保障と私的保障,規制と競争,協調と競争,保障と金融などの分岐点に立っている。生命保険が大量取引システムであるため,生命保険企業は拡大と成長を図らねばならず,市場競争は避けられない。収益性・成長性のための戦略,社会的貢献のための戦略などの経営戦略が必要となる。生命保険経営のために情報が重要であり,ことに市場競争のためには情報的資源は不可欠である。生命保険企業には,高度な情報収集力と分析・判断力が必要とされるが,情報を活用して経営戦略に用いるだけでなく,情報を提供することも重要な責務である。
- 慶應義塾大学の論文
- 1993-04-25