退職金・企業年金の企業定着効果(庭田範秋教授退任記念号)
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概要
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本稿では退職金・企業年金の持つ企業定着効果の計量分析を行なう。同時に,この転職率関数に退職金・企業年金と賃金を別々の説明変数として含めることの理論的前提となっている賃金と退職金・企業年金の間のトレード・オフ関係についての確認も行う。これらの計測に使用したデータは,労働省政策調査部(旧統計情報部)の『賃金構造基本調査』と『退職金制度・支給実態調査』および,中央労働委員会事務局の『退職金・定年制および年金事情調査』である。計測の結果,勤続者の退職金・企業年金の現在価値はマイナス,離職者の退職金・企業年金の現在価値はプラスに計測された。この係数の符号は,勤続を続けたときの退職金・企業年金総額は高いほど,転職した場合の退職金・企業年金総額は低いことを示しており,理論枠組と整合的な結果である。また,能力をできるだけ統御したもとで退職金・企業年金の総額を被説明変数,賃金総額を説明変数とする回帰分析を行なうと,賃金総額の係数はプラスに計測され,退職金・企業年金の総額と賃金総額の間にトレード・オフ関係のあるということは確認できなかった。
- 1993-04-25