網膜前増殖膜および網膜後索状物の病理組織学的検討
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概要
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難治性網膜剥離であるProliferative vitreoretino-pathy(以下PVRと略)は,剥離網膜前後面にそれぞれPreretinal membrane(以下PRMと略)とRetroretinal strand (以下RRSと略)ができ,それらが収縮するために生じる。今回筆者は26例のPRMと6例のRRSを電子顕微鏡で観察した。またシリコンオイルは重症のPVRに眼内充填剤として用いるのに有効であるが,シリコンオイル充填眼より得られた12例のPRMと1例のRRSが32例の中に含まれる。PRMの構成細胞は網膜色素上皮細胞,グリア細胞,大食細胞,線維芽細胞,筋線維芽様細胞が報告されているが,今回の検討では筋線維芽様細胞を除くすべての細胞が観察された。大食細胞は網膜色素上皮細胞より分離される所見が観察された。線維芽細胞は間葉系細胞と推察されている報告が多いが,網膜色素上皮が線維芽細胞様に異化する過程が観察された。RRSの構成細胞としてグリア細胞の明確な病理組織像を呈示した報告は筆者の知るかぎりないが,グリア細胞からなるRRSが存在した。シリコンオイル充填眼のPRMとRRSでは,網膜色素上皮細胞と大食細胞にシリコンオイルの取り込みがみられ,グリア細胞にはほとんど認められなかった。また血管の増生が顕著で,シリコンオイルの機械的刺激が考えられた。
- 神戸大学の論文