熱帯林と地球環境変動再考-東南アジア・南太平洋地域の研究から-
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概要
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熱帯林の喪失が地球環境変動に連鎖していることが謂われて久しい。そして今日まで熱帯林の再生回復を目指す研究も盛んに行われてきた。しかしこの熱帯林に関する一般的な認識は必ずしも正確とは言い難い。高温多湿な環境条件下で成立する熱帯雨林が熱帯林の全てであるかに思われているが,実際の熱帯域には様々な熱帯林が分布している。特に東南アジアを中心に,南太平洋も含めて,現地で実際に観察したデータから,熱帯林植生の種類を分類し,特にタイ国での調査結果から熱帯の乾燥地に発達するモンスーン林(季節風林)について群系下位単位を分類した。これは植物社会学的に群集分類を行ったのではなく,熱帯乾燥地における植生遷移過程を解析するための手段として試みたものである。もう一つの問題は,森林伐採が大気中の炭酸ガス固定能力を著しく失うことなど,熱帯林の喪失が様々な地球環境変動に関わっていることが知られている。しかし森林伐採は確かにその時点で炭酸ガス固定能力を失うなど,環境を大きく変動させるが,森林伐採後,その森林が最も大きく変わるものは何か,また伐採後その森林はどうなって行くかなど,熱帯林自体の変化,すなわち植生遷移を見つめることが重要である。そこで熱帯林植生の種類よって構成種が違っていることが,その植生遷移を推測する一つの手がかりとなるものと考え,構成種の問題,すなわち熱帯林の多様性の問題に触れた。最後にこれらの熱帯林の生態的特性から,熱帯林と地球環境変動とが,どのような連鎖関係を持つかについて検討する基礎的な事項を取り上げ,以て熱帯林と地球環境変動問題を再考した。
- 2003-03-20
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