実験性水頭症犬と静脈洞閉塞犬における脳室拡大と頭蓋内圧環境
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概要
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頭蓋内静脈圧亢進下では髄液圧(CSFP)と上矢状静脈洞圧(SSSP)の圧較差が減少し,髄液吸収が障害され水頭症や良性頭蓋内圧亢進症(BIH)をきたす。本研究ではこれらの病態下での髄液動態と脳室拡大の関係を調べるため以下の実験を行った。コントロール犬では大槽圧(CMP)は平均8.5±2.0mmHg,SSSPは4.6±2.3mmHgでCMP>SSSPの圧関係を認めた。Bolus法とsteady-state法によるCSF outflow resistanceの評価ではbolus法での値が低い傾向にあった。Silicone oil注入による水頭症作製では経時的にCSFPとSSSPの上昇と両者の圧勾配の減少を認め,CSFP上昇によるSSSPの二次的上昇が示され,頭蓋内コンブライアンスは低下した。Alkyl-alpha-cyanoacrylate polymerの上矢状静脈洞内注入ではCSFPとSSSPは上昇し両者の圧勾配は逆転しSSSP>CSFPとなり,髄液吸収は障害されCSF outflow resistanceは増大した。閉塞が中等度の場合はコンブライアンスは静脈血うっ血により増大し,閉塞が高度な場合は脳血流低下によりコンブライアンスも低下した。経時的には嗅神経からの髄液吸収路の発達により圧は下降し脳室拡大を認めなかった。骨窓追加によりコンプライアンスは増大したが,静脈洞閉塞により脳室の拡大は得られず,本研究での静脈洞閉塞モデルは良性頭蓋内圧亢進症のモデルに相当することが示唆された。
- 神戸大学の論文
- 1989-09-12