ヒト脳腫瘍における組織内グルタチオンの定量的解析及び蛍光組織化学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
還元型グルタチオン(Glutathione SH-type,以下 GSH)は放射線照射ゃある種の化学療法剤から発生するfree raicalによる細胞障害に対する防御の役割を担い,GSH濃度は細胞の放射線感受性や薬剤の細胞毒性に影響を与える。40例の原発性及び転移性脳腫瘍のGSHを定量的に解析し、その値と臨床例10例の放射線照射後の成績との相関を検討した。更にGSHの組織内局在を検討する目的で蛍光組織学法によるGSH染色を行なった。GSH値はglioblastoma multiformeで195.2±57.1μg/wg,内減圧を目的とするlobectomyによって得た正常脳で44.1±105.1μg/wg, meningiomaで614.4±237.4μg/wgであり,glioblastomaと正常脳, meningiomaとの間に有意差(p<0.01)を認めた。またastrocytoma gradeII-IIIでは321.9±11.8μg/wgでglioblastomnmaとの間で有意差(p<0.05)を認めた。臨床例との比較ではGSH値と治療成績との相関係数(R)は0.89であり,GSH値の高い症例で治療抵抗性を示し,低い症例に放射線感受性のある傾向を認めた。以上の結果よりGSHが腫瘍の放射線感受性のmarkarとなり得る可能性が示唆された。GSH染色ではGSHは細胞質内に存在し核内には認められなかった。GSH値の低いmaltiple myelomaではGSHの染色状態は不良で,GSH値の高いmeningiomaでは良好であった。glioblastomaではendothelial proliferationのendotheliumでの染色状態は不良で,この部分がfree radicalによって障害されやすい可能性が示唆された。
- 神戸大学の論文