糖尿病性腎症における腎血行動態と尿中プロスタグランディンに関する研究
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概要
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糖尿病の合併症である糖尿病性腎症は,緩徐ながらも確実に進行し,生命予後を左右する重大な合併症であり,その成因についても,また治療法についても確立されていない。近年,Brennerらは,腎血行動態の亢進"hyperfiltration" が糖尿病性腎症の成因として重要であることを報告した。本研究では,この血行動態の変化を引き起こす因子として,腎で産生されるプロスタグランディン(PG)に注目し,腎機能に及ぼす作用について検討した。その結果,糖尿病患者および健常人において,クレアチ二ン・クリアランス(Ccr) と尿中PGE_2排泄量との間に有意の相関を認めた(n=83,r=0.56)。Ccr,あるいは尿中PGE_2排泄量と血糖コントロール状態との間には,有意の相関は認めなかった。またNODマウスでは,糖尿病発症後一週間で尿中PGE_2排泄量は著明に増加していた(0.31±0.11VS1.98±0.21ng/day/g・BW)。高蛋白負荷による一時的なhyperfiltrationモデルでの検討では,Ccrの上昇に伴なって,尿中PGE_2排泄量の増加が認められた。さらに,この変化はcyclooxygenase阻害剤によりCcrとPGE_2排泄量ともに抑制された。これらから,糖尿病では発症初期から腎でのPG合成が亢進し,これがhyperfiltrationの一因なるものと考えられた。従って,糖尿病の発症当初から,腎でのPG合成を抑制することは,腎症の発症および進展予防の有力な手段となり得るものと考えられた。
- 神戸大学の論文