糖尿病患者のリポ蛋白組成 : 特に正指血症症例のVLDL及びLDL粒子の組成異常について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
正脂血症を呈する糖尿病患者67例の脂質代謝,特にリポ蛋白組成の変化を治療法別,さらに血糖コントロール状態別に検索した。症例は,先ずその治療法によって3群に分けた : インスリン治療群(insulin群),経口血糖降下剤群(SU群),食事療法群(diet群)。正脂血症を研究対象とするために血中コレステロール(Ch) とトリグリセライド(TG) は夫々,230と150mg/dl以下に限定した。症例の年齢と比体重にあわせた正脂血症健常人21例をコントロール(control群)とした。血中総ChとTGは4群間で差は無く,血中アポ蛋白(apo)Bは糖尿病各群とも高く,特にSU群とdiet群ではその上昇はcontrol群に比し有意であった。超低比重ザポ蛋白(VLDL)分面白(Sf12-400) において,TG,apoBは4群間で有意差は認めなかったが,Chは糖尿病3群で有意に高く,Ch/apoBの比率はSU群とinsulin群で有意に上昇していた。また低比重リポ蛋白(LDL)分画においては,Chは4群間で有意差はなかつだが,apoBは糖尿病3群で有意に高く,Ch/apoBの比率はSU群とdiet群において有意に低値であった。高比重リポ蛋白(HDL)分画におけるChは4群間で有意差はなかったが,血中apoAI はdiet群とinsulin群で有意に低下していた。また次に,症例をその血糖コントロール状態によってgood contro I群(G群,HbA 1c<7.5),moderate control群(M群,HbA 1c 7.5〜10.0),poor control群(P群,HbA 1c>10.0)の3群に分けた。Total-及びLDL-Ch,またTotal-TG及びHDL-Chもこれら4群間で全く有意差を認めなかった。血中apoBはいずれの糖尿病群共有意に上昇していた。TG-richリポ蛋白分画については,ChがM群及びP群で有意に上昇しており,Ch/apoBもG群及びM群で有意に上昇していた。一方LDL分画においては,Chは4群間で有意差は無かったが,apoBはG群,M群で有意に高値であった。またLDL-(Ch/apoB)は糖尿病3群で低下傾向にあり,P群で有意に低値を示した。以上,正脂血症の糖尿病患者ではVLDL粒子のCh-enrichmentを認めたが,LDL粒子においてはむしろ,Ch含量の減少を認め,特にこの変化はpoor control群で著明であった。またHDL粒子の組成異常の可能性も示された。これらの事実より,糖尿病患者においてはたとえ正脂血症であっても動脈硬化のリスクが高いことが強く示唆され,さらにこのリスクには血糖コントロール状態が深く関わっていることが考えられた。
- 神戸大学の論文