抗イディオタイプ抗体による脳腫瘍ワクチン療法に関する基礎免疫学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
Jerneのネットワーク仮説より,あるイディオタイプに対応する抗イディオタイプ抗体の超可変部は抗原と相同の構造を有するという事実が導きだされ,従来の抗原では免疫応答の惹起できなかった腫瘍分野でこれを抗原代替物とするワクチン療法が試みられている。私共は今回,種属間共通腫瘍関連抗原を認識する単クローン抗体に対して作成した単クローン抗イディオタイプ抗体を用い,Fisher ラット由来9Lグリオーマ系に対するワクチン療法実験を行なった。その結果,抗イディオタイプ抗体の免疫により,元の抗原と反応する抗抗イディオタイプ抗体が産生され,更に遅延型過敏反応の惹起,in vitro sensitizationによるヘルパーT細胞及び細胞障害性T細胞の誘導という細胞性免疫の積極的関与を示唆する結果が得られた。そして,抗イディオタイプ抗体を予め免疫することにより,in vivoで有意な腫瘍増殖抑制効果が生じることも確認された。以上の結果より,自己抗原に対する免疫不応という障害に阻まれていた腫瘍免疫療法に対し,抗イディオタイプ抗体の応用が一つの突破口となりうる可能性が示唆された。
- 神戸大学の論文