ガラクトース経口負荷試験およびエタノール・ガラクトース同時経口負荷試験の臨床的意義 : 特に肝細胞redox stateの指標としての血中ガラクトース値と 血中乳酸/ピルビン酸比の評価について
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概要
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ガラクトースはNADを補酵素として肝臓の細胞質でのみ代謝される,一方,エタノールもその大部分が同じくNADを補酵素として肝臓で酸化される。ガラクトース経口負荷試験を施行すると,血中ガラクトース値と血中乳酸/ピルビン酸比(L/P比)は上昇し,その変動は肝障害の重症度を明確に反映した。特に,アルコール性肝障害におけるL/P比はガラクトース負荷前の状態に回復するのに手間取り,本疾患の病因にNAD/NADH比が関与していることが伺われた。次いで,エタノールとガラクトースを同時負荷すると,肝細胞の細胞質内のNAD/NADH比は一層還元型に傾き,両者の代謝は互いに抑制を被ることが予測された。事実,健常者と肝硬変症を除く各種肝疾患で血中ガラクトース値と血中L/P比はさらに上昇し,肝細胞内のredox stateの還元型への傾きが増大することを示した。一方,肝硬変ではエタノールによる血中ガラクトースの代謝抑制が不明瞭であり,肝細胞内のredox stateが既に充分還元型に傾き,予備能の低下を示すものと考えられた。エタノール同時投与時のL/P比は各対象群で更に上昇したが,肝硬変症において特徴的変動を示さなかった。血中アセトアルデヒド値はflushing群がnon flushing群に比して高値を示したが,アルコール性肝障害で他の肝疾患に比して明確な違いを示さず,本疾患の病因との因果関係は実証されなかった。
- 神戸大学の論文