小児開心術後急性期における連続肺動脈圧測定および圧波形解析の臨床的意義
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概要
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肺高血圧を伴う心室中隔欠損症(VSD・PH)に代表される高肺血流群ないし肺高血圧群とファロー四徴症(TF)に代表される肺血管床の低形成群を対象に,術後急性期における肺血行動態の評価を目的に,Windkessel modelに基づく肺動脈圧波形の分析を行った。対象は,VSD・PH群26例,ファロー四徴症(TF)群25例,対照群として肺高血圧を伴わないVSD群29例で,さらにVSD・PH群に総肺静脈還流異常症12例,大血管転位症II型2例を加え肺高血圧群とした。肺血行動態の評価には,肺動脈平均圧(m-PAP),肺対体血圧比(Pp/Ps),血管抵抗(R)に加え,肺動脈圧波形より求めた拡張期時定数(TC) およびコンプライアンス(C)を用いた。VSD・PH群では,体外循環後18時間までm-PAPは22mmHg以上,Pp/Psは0.33以上,Rは0.19以上と対照群より高値を示した。また,m-PAPとPp/Psは,TCと弱い正の相関関係(r=0.538,0.471)にあった。TF群では,Pp/Ps は体外循環18時間後に0.25に低下したが,いずれの時点においても対照群より高値を示した。またm-PAPとPp/Psは,Cと弱い負の相関関係(r=-0.348,-0.383)にあった。また,肺高血圧群を術後のPp/Psが0.5以上となり塩酸トラゾリンを必要としたI群(16例)と術後肺高血圧を示さなかったII群(24例)に分類し,呼吸のウィーニング期にみられる肺高血圧について検討した。I群は,既に調節呼吸期よりPp/Ps,m-PAP, RともII群より高く,Cは調節呼吸期,ウィーニング期ともにII群より低値を示した。さらにI群II群のうち,調節呼吸期でPp/Psが0.5以下,かつm-PAPが35mmHg以下の症例をI'群II'群とし,このうちTC,Cが測定可能であったI'群7例とII'群20例について検討したところ,調節呼吸期においてPp/Ps,m-PAP,Rは両群間に有意差はなかったがI'群のうち7例中5例はTC0.14以下かつC0.8以下の範囲に含まれII'群と明らかに区分された。以上の如く,TC,C は疾患による肺高血圧の相違を示し,術後の調節呼吸期に肺高血圧が正常化していても,TC0.14以下,CO.8以下の症例は,ウィーニングに際して,肺高血圧が出現し,トラゾリンを必要とする場合が多かった。