粘弾性モデルを用いた有限要素法による脳内応力の解析
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概要
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麻酔下にWister ratの硬膜を露出し,バイオメカニカルスベクトロメーターにて脳を圧迫し,creep曲線を得た。次にratの脳の断面を元にして有限要素法による粘弾性モデルを作成し,脳の圧迫のシミュレーションを行った。それによって得た圧迫点のcreep曲線を動物実験で得たそれと一致するよう、粘性係数,ヤング率,ポアソン比を決定した。これらの値を使用し,さらにプログラムを改良して人間の脳のモデルを用いたシミュレーションを行って,慢性硬膜下血腫,髄膜腫における,変位のシミュレーションとCT,MRI画像との比較を行い,さらに脳内の応力とSPECTについても比較検討を行った。変位に関しては脳室の変形がシミュレーションとよく相関していた。応力分布では,大脳鎌や脳室が応力にたいして緩衝帯として働いており,SPECTと比較してみると応力集中を受けた部分ほど血流障害を生じることがわかった。応力集中による脳血流の低下は硬膜下血腫や脳腫瘍の摘出後の脳浮腫や急性脳腫瘍の形成に虚血性変化が大きく関与していることを示唆している。今後このようなモデルを様々な病態に応用することにより,脳内応力の病態生理に対する関与について新しい知見がもたらされることが期待される。
- 神戸大学の論文