ヒメエグリバの野外条件での発生経過
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概要
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松山市近郊でのヒメエグリバの発生生態を明らかにする目的で, 越冬幼虫由来の成虫が産卵し始める6月上旬以降, 5日∿20日間隔で採卵し, 野外条件に近いプレハブハウス内で飼育を繰り返して年間の成・幼虫の発生経過, 成虫の生存及び産卵経過を調査した.この結果を, 荻原ら(1995)が室内飼育記録から得た発育零点, 有効積算温度, 休眠誘起の臨界日長などを参考に解析した.その結果, 各世代の最も早く産卵した個体の発育経過から年間の発生回数および発生時期を推定すると, 越冬世代由来の第1回成虫が5月下旬, 6月5日産下卵由来の第2回成虫が7月中旬, 7月14日産下卵由来の第3回成虫が8月中旬, 8月20日産下卵由来の第4回成虫が9月下旬からそれぞれ発生することになり, 年間の成虫の発生回数は4回となる.これは実験的に得られた発育零点から算出した有効積算温度約556日度と, 松山市の気象データから計算した有効積算温度2, 100∿2, 150日度とから推定される年発生回数(約3.8回)とよく近似した.成虫は一般に雄がやや長く生存し, 雌雄とも高温時期に生存日数が短くなる傾向がみられ, 各時期の平均で23∿62日, 最長82日間生存した.産卵数は羽化4∿9日後にピークに達するが, 産卵期間は長かった.一雌の総産卵数は平均1, 023∿1, 224個で, 最多例は1, 830個であった.6月上旬から8月中旬までに産卵されたグループは全て順調に蛹化羽化したのに対して, 8月下旬に産卵された場合には順調に発育し蛹化羽化する非休眠グループと, 幼虫期の発育が遅延し翌春まで蛹化しない休眠グループにわかれた.また9月第2半旬以降に産卵された場合には全ての幼虫が休眠に入り, 老熟幼虫で越冬した.松山市での8月第6半旬∿9月第1半旬の有効日長は13時間35分∿13時間15分であり, すでに実験的に推定した休眠誘起の臨界日長13時間∿13時間30分とほぼ一致した.このように, 越冬は9月中旬以降の産下卵に由来する世代の休眠幼虫態で行なわれ, 成虫, 卵, または蛹での越冬の可能性はきわめて少ないと考えられた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1996-03-25
著者
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