頭蓋脊椎移行部の骨奇形を伴った患者の歯科矯正治療の 1 例

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頭蓋脊椎移行部すなわち, 後頭骨から第1, 第2頸椎付近は発生学的に複雑な過程を経て形成されるため, 同部には種々の形成異常や骨奇形が起こる可能性が高く, また, 多様な神経症状を伴うことが多い.今回, 初診時検査の側面頭部X線規格写真において大後頭孔部と頸椎付近の骨の異常が疑われ, 整形外科医より頭蓋底陥入症ならびに第2, 第3頸椎癒合と診断された1症例の歯科矯正治療を行う機会を得たので報告する.患者は叢生を主訴として来院したの女子である.初診時のX線検査により大後頭孔付近の骨形態の異常が疑われ, 整形外科にて上記のような診断がされたが, これらの骨奇形に伴いしばしばみられる短頸, 毛髪線低位, 斜頸等は著明でなく, 頸の運動制限や他の神経症状はまったくみられなかった.整形外科の立場から, 歯科矯正治療を行うことに問題はないとの回答を得て, 両側上下顎第一小臼歯抜去の後, マルチブラケット装置を用いた治療を開始した.この際, 頭蓋脊椎移行部に骨奇形を有するため顎外固定装置は使用しないこととした.時にほぼ良好な咬合が獲得されたため動的治療を終了した.本奇形においては早期発見と早期治療が重要となる場合もある.歯科矯正臨床では初診時の顔貌診査や側面頭部X線規格写真等を分析する際の注意深い観察によって, その早期発見の可能性もあることから, 本奇形に対する認識をもつ必要があろう.また, このような症例の歯科矯正治療を行うにあたっては, 関連医科との対診を行いながら, 治療方針を決定することが重要であろう.
日本矯正歯科学会の論文

頭蓋脊椎移行部の骨奇形を伴った患者の歯科矯正治療の 1 例

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