実験的歯の移動時におけるビスホスホネート(パミドロネート)局所投与が破骨細胞に及ぼす影響
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概要
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骨吸収抑制作用があるといわれているビスホスホネートの1つであるパミドロネートが, 実験的歯の移動時に出現する破骨細胞に及ぼす影響について検討を行った.実験には10∿12週齢のラットを用い, 歯の移動はWaldo法に基づいて行った.すなわちラットの上顎左側第一臼歯(M1)と第二臼歯(M2)間にゴムを挿入し近遠心方向に1, 3, 5, 7日間移動させた.歯の移動開始1日前よりM1口蓋側粘膜下に生理食塩水あるいはパミドロネートを毎日1回投与した.生理食塩水投与を対照群, パミドロネート投与をパミドロネート投与群として組織学的に比較観察を行った.1. 破骨細胞数は, 対照群にくらベパミドロネート投与群では有意に減少していた.2. トルイジンブルー染色における光顕観察では, 対照群の破骨細胞に波状縁がみられたが, パミドロネート投与群では認められなかった.3. 透過型電顕観察では, 対照群において高電子密度のMicroperoxidase反応が破骨細胞内と吸収窩表面に帯状にみられたが, パミドロネート投与群では, 細胞内の反応が認められなかった.4. TRAP活性染色において対照群の破骨細胞では, 吸収窩に接している波状縁に陽性反応がみられたが, パミドロネート投与群の破骨細胞では陽性反応は微弱で, 細胞内での局在性は認められなかった.5. カテプシンLの局在は対照群の破骨細胞においては, 吸収窩に接している波状縁にみられたが, パミドロネート投与群の破骨細胞では細胞膜表面に弱い陽性反応が認められただけであった.6. 対照群の圧迫側破骨細胞, 牽引側骨芽細胞にtransforming growth factor beta(TGF-β)の強陽性反応がみられたが, パミドロネート投与後ではこれらの陽性反応は認められなかった.以上の結果から, 歯の移動時に局所投与されたパミドロネートにより, 破骨細胞に形態変化, 骨吸収能の低下, 細胞数の減少が引き起こされたと考えられる.また, 破骨細胞のみならず, 骨芽細胞にも機能低下が起こっている可能性が示唆された.
- 日本矯正歯科学会の論文
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