中学生,高校生における顎機能異常の有無が咀嚼機能の主観的評価に及ぼす影響について
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概要
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本研究では,中学生・高校生における顎機能異常の発症頻度,および咀嚼能力の主観的評価と顎機能異常ならびに咬合機能との関連を検討することを目的とした。札幌市内の2つの中学校と2つの高校に在籍する全校生徒1,381名を対象とした。調査の内容は,(1)自記式質問調査法による食品の摂食可能の程度,自覚的な顎機能異常の有無,(2)口腔内診査(現在歯数とDMF歯数)と(3)臨床的な顎機能異常の有無,および(4)咬合感圧紙を用いての咬合機能(咬合力・咬合圧・咬合接触面積)の測定であった。自記式質問紙調査より,対象者を摂食に不自由のない者(咀嚼能力の高い者)と不自由を感じている者(咀嚼能力の低い者)とに分類して,2群の間で年齢,性別,現在歯数, DMFT,顎機能異常の自覚的症状と他覚的症状,および咬合機能を比較した。最終的にすべてのデータの整った男子648名,女子663名,計1,311名を分析対象とした。その結果, 1.21品目の食品すべて摂食可能と答えた者は780名(咀嚼能力の高い者:分析対象者の59.5%),1つでも摂食が困難であると答えた者は531名(咀嚼能力の低い者:分析対象者の40.5%)であった。2.中学2年生,高校2年生,高校3年生において,女子に咀嚼能力の低い者の占める割合が男子と比べて有意に高かった。3.顎機能異常について最も多く認められた症状は,自覚症状では関節雑音であった。また歯科医が判定した結果,各学年ともクリック音の症状がある者の割合が最も多く,全体の9%の者に認められた。次に高頻度に認められた症状は顎偏位(3.3%)であった。4.単変量解析の結果,自覚症状("顎関節部の疲労感"および"関節痛"),性別(女性),クリック音の4項目において咀嚼能力との間で有意な関連(p<0.01)が,顎機能のそのほかの症状(顎圧痛,筋症状,顎運動痛,開口制限のいずれかがある)において有意な関連(p<0.05)が,そして,8本以上DMF歯数を有している者(OR=1.25)に10%以下の水準で有意傾向が認められた。ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状("顎関節部の疲労感",p=0.048),女性(p<0.001)の項目で有意な関連が認められた。以上より,中学生,高校生における顎機能異常(筋症状)の有無が咀嚼能力に影響している可能性が示唆され,この年代における咀嚼能力の低下を防ぐために顎機能異常の重症化を予防する重要性が示唆された。
- 2002-10-30
著者
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