矯正学的歯の移動に伴う歯根膜の力学的特性と微細構造の関連性
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概要
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矯正学的歯の移動前後および保定後の歯根膜の力学的特性と, それに伴う支持組織の微細構造学的変化の関連性について, 雄性ビーグル成犬を用いて検討した.力学試験は, 歯-歯根膜-歯槽骨ブロックを作製し, 引張試験機による破断試験を行い, 応力-ひずみ関係をもとめた.形態観察は, 光学顕微鏡ならびに走査電子顕微鏡(SEM)により行った.引張試験より得られた力学的特性では, 引張強度, 弾性係数ともにcontrol群に較べ移動群では減少し, 保定群では再び増加する傾向がみられた.また, 破断ひずみは移動群牽引側と保定群圧迫側において, 弾性係数は保定群牽引側において有意に高値を示した(p<0.05).形態観察より, 歯の移動に伴う圧迫側と牽引側における歯周組織の反応は, 移動終了時において差違を生じており, その後の治癒機転においても, この組織反応の違いは時間差として残存した.引張強度が有意に低下した移動群圧迫側では支持歯槽骨の吸収が顕著であり, また, 破断ひずみが有意に増加した移動群牽引側と保定群圧迫側に共通して, 新生コラーゲンの増加がみられた.付加された新生コラーゲンが成熟していく保定群牽引側における微細構造は, control群と類似した像を示した.以上より, 歯の移動直後の歯周組織の改造修復現象は圧迫側と牽引側で違いを生じ, その後も時間差として残存し, その支持機能は歯の移動に伴い一時的に低下するものの, 局所組織の修復過程におけるコラーゲン線維の再構築に伴い, その物理的性質を刻々と変化させながら回復していく可能性が示唆された.