わが国の成人集団における口腔保健の認知度および歯科医療の受容度に関する統計的解析
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概要
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わが国の歯科保健医療の実態を行動科学的に捉える1つの方法として,成人を対象とし,職域を1つに限定し,全国規模として北から南にかけて9地域を選定した。調査対象者は,人口10万人以下の9市の市役所に勤務する成人1,418名である。統計的な検定は,x^2検定と多重ロジスティック回帰分析を用いた。歯科治療に対して強い不安をもつ者の割合は,33.1〜56.6%の範囲であり,25〜34歳および55〜64歳の年齢層で,女性が有意に高い割合であった。過去1年間に歯科を「受診しなかった」者は,男性が38.9〜51.2%の範囲であり,女性では32.3〜43.9%であった。北海道,中部,関東,近畿,中国および九州の9地域を比較した結果,就寝前の歯みがき習慣のある者は63.5〜81.2%の範囲であり,かかりつけの歯科医師をもつ者は59.4〜80.7%であった。口腔保健への促進因子と阻害因子について,35〜44歳の年齢層で解析した結果,就寝前の口腔清掃行動に有意に働く因子は口腔保健に関する知識であり,かかりつけの歯科医師の有無では,(1)家族数(三世代)と(2)症状を自覚した際に歯科医院へすぐ行く態度が選択された。定期歯科健診の受診では,(1)「年収」と(2)「歯科治療への恐怖心」が関連していた。以上の結果から,成人の口腔保健に関する認知度および歯科医療の受容度には,性差,年齢が明らかに影響を及ぼしており,地域性との関連も認められた。口腔保健行動には,「知識」,「歯科医療機関へのアクセシビリティー」,「歯科治療に対する不安」,「周囲からの働きかけ」,「経済性」などが関与していることが示された。
- 有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
- 1998-01-30
著者
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